この記事は当社スタッフの体験に基づいていますが、インタビュアーとライターは自社で開発しているAIです。まず自分たちで使ってみています。
Webサイトの制作やリニューアルで「思っていたものと違う」という二度手間が生まれる背景には、ヒアリング段階での情報共有の精度不足があります。Attracca株式会社では、音声録音・AI活用・担当者の見解整理を組み合わせた「カルテ型」のプロセスで、クライアントの課題と熱量をデザイナーに正確に届ける仕組みを整えています。この記事では、そのプロセスの全体像と、実際の製造業クライアントへの関わりを通じて見えてきた考え方を詳述します。
なぜヒアリング後に認識のズレが生まれるのか
Webサイト制作の現場では、たたき台を先に作ってから見積もりを提示するケースがあります。このフローの問題は、制作を始める前の段階で十分に話を聞けないまま手を動かさざるを得ない点にあります。結果として、こちらの認識とクライアントの認識がずれ、修正・作り直しという二度手間が発生します。
このズレは、担当者の経験や注意力の問題ではなく、構造的な問題です。ヒアリングで聞いた内容を「そのまま議事録にまとめる」だけでは、次に何をすべきかが不明確なまま情報が渡ってしまいます。デザイナーが受け取る段階で既に方向性が定まっていなければ、制作の精度は上がりません。
カルテ型情報共有とは──Attraccaが開発した独自プロセス
「カルテ型情報共有」とは、ヒアリングの音声録音・文字起こし・AI活用・担当者の見解整理を一つのフローに組み合わせ、デザイナーが受け取る段階で次のアクションが明確になっている状態を作るプロセスです。
具体的な手順は以下のとおりです。
- 音声録音と文字起こし:ヒアリングをその場で録音し、後から正確に文字起こしをします。記憶や手書きメモに頼らないことで、クライアントが話した言葉の細部を保持します。
- AIへの組み込みとプロンプト設計:文字起こしをAIに丸投げするのではなく、次のステップへ進むための目的を明確にしたプロンプトに組み込みます。AIはあくまでも整理のツールであり、方向性を決めるのは人です。
- 担当スタッフの見解とネクストステップの付加:AIが生成した整理情報に、ヒアリングを担当したスタッフ自身の見解・気づき・次のアクションを加えます。この工程がカルテ型の核心部分です。
- 熱量・重要度の言語化:ヒアリング中にクライアントが特に切実に話していた場面、声のトーンが変わった瞬間、繰り返し言及していたテーマを記録し、「どこに熱量があったか」をデザイナーに伝えます。
このプロセスによって、デザイナーは情報を読み解くところから始めるのではなく、クライアントの課題と想いを理解した状態でデザインに向かえます。
製造業クライアントの事例──「人材の成長」という切実な課題
最近関わっている製造業のクライアントは、Webサイトのリニューアルを控えています。ヒアリングの中で話題になったのは、現状のビジネスは順調であるものの、先を見たときに何が必要かという問いでした。その答えとして出てきたのが「人材の成長」です。
そのテーマを話すクライアントの空気は、切実なものでした。売上や集客の話をするときとは明らかに異なる熱量があり、この課題こそがリニューアルの根本にあると判断しました。
Webサイトそのものに「人材育成の仕組み」を組み込むことはできません。しかし、企業ビジョンを対外的に発信することで、社内のスタッフが自分ごととして捉えられる状態を作り、成長機会につながる環境を整えることはできます。また採用の観点では、そのビジョンに共鳴した人が集まれば、一緒に目指そうとする仲間が自然と増えます。
これはAttracca独自の考え方です。「この指とまれ」の感覚と表現しているように、会社の将来に興味関心がなければ、スタッフ自身も変化しようとはなりません。ビジョンを理解できる状態を作ることが、組織の変化の起点になります。
「どうなりたいか」を知らずにデザインはできない
デザインの仕事を「見栄えの良いものを作ること」と捉えていた時期もありました。しかし実際にクライアントと向き合い続ける中で、本質はそこにないと気づきます。クライアントがデザインを依頼するのは、何らかの課題があり、どうなりたいかという意図があるからです。
その意図を理解しないまま制作を進めると、完成したものが課題の解決に繋がらないケースが生まれます。一方で、課題と目的を理解した上でデザインすると、制作物がクライアントの成長に直接関わるものになります。
この考え方はすべてのクライアントに共通しています。企業の成長を支える要素は、顧客に恵まれることと、その顧客を支えるスタッフに恵まれることです。Webサイトやブランドの言語化は、その両方に働きかける手段です。
重要なのは以下の3点です。
- クライアントの現状だけでなく、「どうなりたいか」を必ず聞く
- ヒアリングで感じた熱量・重要度を制作チームに言葉で伝える
- デザインの目的を「見栄え」ではなく「課題解決と成長」に置く
このプロセスを続けることで、制作物が一時的な成果物ではなく、クライアントのブランドを育てる資産になります。
まとめ
- ヒアリング後の認識のズレは、情報共有の構造的な問題から生まれます。たたき台先行のフローは二度手間のリスクを高めます。
- Attraccaでは音声録音・AI活用・担当者の見解付加を組み合わせた「カルテ型」プロセスで、デザイナーが受け取る段階で次のアクションが明確な状態を作っています。
- ヒアリング時のクライアントの「熱量」と「重要度」を言語化してチームに共有することが、制作の精度を高める核心です。
- 製造業クライアントの「人材の成長」という切実な課題に対し、企業ビジョンの対外発信という形でWebサイトリニューアルの方向性を設計しています。
- デザインの目的は「見栄え」ではなく「クライアントの課題解決と成長への伴走」にあります。この姿勢がブランドを育てる長期的な関係を生みます。